BCP策定推進フォーラム2021開催レポート ~事例3~

感染対策をしながら、組織力向上!
コロナで我が社は強くなった
大成化工株式会社 代表取締役社長 稲生豊人氏

私は、大成ホールディングスのケミカル事業をお預かりしています。当社は千葉県成田市に事業所を置いていますが、同じケミカル事業の大成ファインケミカルは千葉県旭市、その研究所は東京都葛飾区新小岩にあります。それぞれ地域が違いますので、同じ関東圏でもBCPへの対応が異なります。基本的にBCPは各事業所長を軸に作るように考えていますが、今回はパンデミックという共通の災害ですので、各事業所のグループセクションのBCPを作り、連携することが重要になると思います。
当社は創立97年で、もうすぐ100年になりますが、創業の精神の中に「いかなる環境においても、会社を存続・発展させたい」という言葉が入っており、ここが当社の原点になっています。BCPへの取り組みでは、2009年に大成ファインケミカルで初めてBCPを策定しました。その後、2011年に震災のためのBCP、2012年に新型インフルエンザのBCP、さらに水害・台風災害のBCPを作って進めてきました。今は2012年に作った新型インフルエンザのBCPをベースにコロナ対応を行っています。
事業戦略とBCPを考えるにあたり、本来のBCPの想定事象である「自然災害」の影響に加え、広い意味での事業継続として「人口変動」の影響、そしてCSRやSDGsの経営といった「企業の存続条件変化」の問題があります。経済学の先生方が「グレートリセット」という言葉を使い始めていますが、世界の激しい変化の中で、広い意味で「どう生存していくか」が重要になってくると思っています。
当社は中間材を扱う会社です。コロナ禍においては、自力で需要を伸ばし、回復できるものがほとんどありませんでした。開発も頓挫しましたので、昨年は赤字になるのではないかということで、現状を突きつけられた状況でした。しかし、ピンチをチャンスに変えるしかない、チャレンジに切り替えていくことが生き残るための条件だと社員と話し合ってきました。
生き残りの活路として始めたのが、業務・詰替用除菌アルコールの販売です。末端商材を扱ったことがない会社でしたが、こうして「営業の突破」を図ったということです。また、生産体制では「週休三日制」を導入しました。AチームとBチームに分け、どちらかが感染しても供給ゼロにならないように対策を打ったものでしたが、それにより、設備の生産性も同時にアップできました。

高まった「役割意識」

コロナ禍では、社員とご家族を守るという前提で、ご家族の年齢構成や、お子様の有無、お年寄りの介護も把握して配慮しています。オミクロン株の流行に対しては、クラスターを起こさないということで目標設定を変更して対応しました。パートの方のお子様が感染しましたが、兄弟会社が作っているUV殺菌装置を3セット提供したほか、空気の対流の状態やCO2の測定、マスクとフェイスシールドなどによる対策により、お子様からの感染もなく復帰できました。
オミクロン対策では、自社で自立して判断していかなければいけないだろうということで早々に対策を組みました。PCR検査キットや抗原検査キットを配布して家庭でもクラスターが起きないように配慮しながら、事実判断していこうということで、各事業所長が進めてくれました。
このように、組織の長がそれぞれの部下との関わりの中で、それぞれの使命に則って、お客様、社員とご家族をどう守るかという「役割意識」が高まってきています。予測と先見を持ちながら進め、「これからも生き残っていこう」という体質に少しずつ変わっていったかもしれません。
全ての経営環境が変わってくる「グレートリセット」の中で、どう生き残っていくかがコロナ禍の中で試されており、組織が生き残るために強くなっていくことが必要になっていると感じています。

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