BCP策定推進フォーラム2019開催レポート ~パネルディスカッション②~

BCPを通じた全員経営の意識醸成
株式会社協和精機 代表取締役副社長 立松 和也氏

BCPを通じた企業コンセプトの実現を

当社・協和精機は金属の切削加工業を営んでおります。私は新卒で、京セラに入社し太陽光発電システムの販売を手掛けていました。その時に経営理念の大切さを学びました。家業である当社に2016年に入社したとき、経営理念はありませんでした。従業員とその家族会社に関わる全ての人の幸せの追求、社会貢献のための改革と挑戦、感謝・素直・思いやりの精神、の3つを経営理念としました。IT化が進んでおりますが、少しでも皆様にも製造業に関心を持ってほしいと思い、「製造業に革命を」という企業コンセプトも定めさせていただきました。

ニュートン・コンサルティング様のご支援の下、2017年にBCPを策定しました。それまでは敷地の外に出る避難訓練をする程で、人命守ることのみしか考えませんでしたが、社員の生活を守るためにも事業を継続させることが必要だと考えました。また、全社員が取り組むことで、責任感と成長にもつなげることができると考え、BCP策定に邁進しました。

当社のBCP 策定の概要についてお伝えします。BCPチームと5S委員会の二つの組織が協力して、社内の各課と共にと取り組んでいます。BCPそのものについては緊急時に持ち出しやすくファイリングしてあります。とはいえ企業というのは生き物ですので、BCPについて会議を行う以外にも、年間スケジュールを組んでいます。例えば2月はBCP訓練の準備、3月は訓練実施、9月はBCP対策資料の見直しといった具合です。

当社のBCP発動の仕組みとして、まず災害発生から避難と安否確認を行います。もし1日でも製造がとまるのであれば、BCP発令します。策定資料に則り、進めていきます。供給が6割まで回復したら、BCP解除です。これまでに資料策定や訓練以外にもさまざまな取り組みを行っています。例えばAEDの設置です。AED設置率は大手企業では88.4%ですが、中小企業では40.8%にとどまっています。調べてみたところ、自動販売機とセットだと安くAEDを設置する業者があることを知り、利用しました。しっかり緊急時にも使えるようにAED講習も実施しています。

備蓄は、いざという時に運びやすいよう、非常食や水をタイヤ付きケースに入れて出入口のそばに置くようにしました。従業員45人の会社ですが、地域の人の受け入れも見込んで100人分の用意があります。また、取引先への緊急連絡票も用意してあり、川越工場は先日の台風19号で被害があり、その際も取引先にファックスで被害状況を送りました。将来の工場予定地として約700坪の土地を確保していますが、ここを一時避難所として地域の避難先として開放しています。今後は太陽光発電と蓄電池を工場に置き、工場だけでなく地域に電力供給を行うことで社会貢献したいと考えております。

BCP策定により、災害時の行動を全員が理解し、日常生活の行動からリスクについて考えるようになりました。「人財」育成効果も大きいと考えます。BCP策定を経験した社員が、自然と会社を守る行動をとるようになりました。また、リーダーシップを養成し、積極的に新プロジェクトの立ち上げをするような社員もいます。少しずつではありますが、全員経営の意識ができてきたと思います。

「製造業に革命を起こす」を企業コンセプトとしている当社ですが、BCPを通じてこの実現に更に近づいていきたいです。

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