東日本大震災時、関西に一時避難して事業を継続(株式会社リオ)
現地現物での検証が必要
同社のBCPでは、現地現物の検証を大事にしている。その理由を山下社長は、「私は阪神淡路大震災で被災した当時の瓦礫の山など、実体験として覚えています。実際に経験していないと、なかなか実感が湧かないでしょう。BCP策定時のエピソードとしては、従業員に避難経路の作成を依頼したのですが、集合場所として決めた小学校への地図を、WEBで見つけてそのまま添付してしまったんですね。その後の防災訓練で、実際には廃校になっていた事実が判明しました。人の命が掛かっているわけですから、必ず現地現物を確認する努力が必要です。」と話している。
従業員の安全のため、一時避難を決断
同社のBCPは、地震の場合、その規模により二つのモードを想定している。まず、震源が千葉や埼玉で、東京は壊滅的な被害を受けていない場合。つまり、復旧の見込みが立ち、ビルが倒壊などしていなければ、東京を拠点に復旧に取り組むこととしている。一方で、東京が壊滅的な被害に見舞われた場合や二次災害の可能性がある場合には、従業員全員を一時避難させることを会社の方針として決めている。東日本大震災では、実際に原発の問題があり、二次災害が懸念された。仙台に従業員が一人いたが、発生5日後にその従業員を大阪に移すと同時に、東京の従業員も全員大阪のホテルに移した。「BCPを策定していたため、判断に迷いは無かった。」と山下社長は振り返る。従業員全員とその家族の4世帯12名が、1か月半にわたり大阪のホテル住まいを強いられたが、その結果として、一人の怪我人も出すことなく、一部を除いてビジネスを継続することができた。
策定したBCPが見事に機能した
同社では、BCP策定からすでに8年が経過しており、人材も入れ替わっているが、継続的にBCPのメンテナンスと従業員への啓発教育を推進している。単に理解するだけでなく、具体的にどう行動するかに重点を置いているという。将来的には、BCPの対象範囲を、同社の協力会社(システム開発会社、物流会社)にまで拡大し、海外ビジネスサポートの拡大に伴うBCPの対象範囲の拡大も検討している。社屋移転に関しても、耐震強度の高いビルを選択するなど、同社のBCPに対する感度は高い。たとえBCPに記述されているとはいえ、従業員の命を守るために全従業員の一時避難を決断するのは、経営者としての英断だ。策定したBCPが見事に機能した好事例と言えるだろう。
株式会社リオ
事業内容:ソフト受託開発、デザイン事業、ITサポート/教育・研修、海外ビジネス
本社:東京都千代田区
資本金:3,500万円
従業員数:7名
BCP概要
・事業の最大許容停止時間 1週間
・事業の目標復旧時間・レベル 3日間で100%