世界600拠点の社員を守るリスクマネジメント(オムロン株式会社)
リスク対策.com 2017年08月22日掲載記事
グローバルで対応できる体制
本社グローバル総務部では、グローバル全体で出張者の安全を確保するため、アシスタンス会社とも協力し対応している。
「これまでは、社員が出張中に病気になったような場合、自分で病院を探さなくてはいけない国も多かったのですが、今は、日本人だけでなく、どの国の社員がどの出張先で病気や事故にあったとしても、24時間、365日、アシスタンス会社が対応して病院を手配してくれます」(櫛田氏)。
このアシスタンス会社が提供する情報一元管理システムにより、社員がどこに出張しているかは、すべて地図上で把握できる。さらに、行く先の国で発令されている危険情報がメールで自動的に送られてくる仕組みになっている。出張者のメールアドレスや電話番号も一元管理システムの中に登録されているため、一斉同報型で簡易に安否確認が行える。
「2016年1月のインドネシアジャカルタ銃撃テロでは、現地に日本人7人、シンガポール2人の計9人の海外出張者がいたため、すぐにシンガポールのリスクマネジャーに連絡して協力して対応にあたり、発生数時間後には9人全員の安否を確認しました」(同)。
課題は従業員教育
今後の課題は、従業員教育だと櫛田氏は強調する。「システムに慣れてきたこともあり、日本人の中には現地の危険情報をしっかり読まずに海外に出張してしまっているケースも見受けられます。ジカ熱やデング熱、あるいは盗難などのリスクについては、しっかりと事前に備えてから行けば防げるはずです。テロのような大きなリスクだけに備えるのではなく、例えば乗り物に乗ったらシートベルトは必ず着用する、蚊にさされないようにする、氷には気を付ける、荷物を車中に置いたままにしないなど、まずは基本を徹底してもらうことが大切だと考えています」(同)。
海外の従業員教育も難しい。「海外の拠点に出向いて防災教育を行うと、“そんなことは言われなくても現地のことは自分たちが一番わかっている”など、なかなか本気になって聞いてもらえません」と櫛田氏は明かす。「“熊本も誰も地震が来ると思っていなかったが来た。会社としては、万が一、大きな災害があっても、あなたがたの命や雇用をしっかり守りたい。そして我々はお客様を守らなくてはいけない。だから協力してくれ”と相手の立場にとって、なぜ防災が大切かということを繰り返し伝えて、ようやく少し聞いてもらえるようになるのです」(同)。
オムロンの社憲は、“われわれの働きで われわれの生活を向上し よりよい社会をつくりましょう”というもの。グローバルにおいても各国で事業を行うことで、よりよい社会をつくり、地域が発展することを事業の大前提に置く。
「つまり、日本人だけの安全を優先するような考え方は許されません。世界で拠点を置く以上、全世界の社員の雇用を守り、その地域のためになる活動をしなければならないのです」と櫛田氏は語る。
(了)