【感染症対策BCPの好事例紹介】株式会社ヘヤゴト
取締役 岡田 鐵也 氏
チーフ 阿部 由起 氏
Q.会社の概要を教えてください。
岡田氏: ウェブや催事を通して、家具の売り手と買い手をつなぐのが当社の事業です。事業の柱は2つあり、1つはウェブサイトを活用し全国の家具の展示イベントを紹介してお客さまの来場を促したり、家具・インテリアにまつわるポータルサイトを運営したりする事業です。もう1つは家具の販売を行う事業で、関東近辺を中心に全国の家具インテリアメーカーのショールーム等をお借りして販売会を行っております。
Q.なぜBCPに取り組もうと思ったのですか?
阿部氏: 私が当社に入社する前ですが、東日本大震災の際に関係先とのやり取りを通じて「どんな状況でも企業は事業を継続するための準備をしておかなくては」という意識を持つようになりました。
それから時は流れ、新型コロナウイルスのパンデミックが発生。助成金関係で東京都中小企業振興公社のHPをチェックしていたとき、感染症に対するBCP策定をサポートする旨の記載を見つけたのです。今こそやるべきタイミングだと思い、まずは、今もっともリスクの高い感染症のBCP策定に踏み切りました。
Q.策定したBCPの概要を教えてください。
阿部氏: 震災や感染拡大が起きても、事業への被害を最小限にとどめ、迅速かつ効率的な復旧ができるよう、有事の際の対応や、事前準備の項目を定めました。感染症は日々状況が変化していくので、それに応じて、とるべき行動を細かく分けました。
緊急事態宣言が発令された場合は、従業員にリモートワークを推奨しています。しかし、販売を行う事業部は、なかなか自宅での作業が難しい。それでも、業務内容を見直してみると、部分的にでもリモートワークができる業務もあると分かったのです。たとえば、お客様とのやり取りがそうですね。これまでは社内の電話で連絡をしていたところをメールに変更し、少しでも社内に人が集まるリスクを減らしています。
Q.BCP策定過程で苦労したことは何ですか?
岡田氏: 状況が定まらない中で、BCP発令のタイミングをどう設定するかの見極めが難しいところです。憶測も多々あふれていますし、現状を正確に判断するため、信頼できる情報源からの最新情報を、注意深く聞いておく必要がありました。
手探りでしたが、当社の理念でもある「まずやってみる」の精神を大切に、BCP策定も進めていきました。
Q.現状のコロナ禍において、計画に基づき具体的に行っていることは何ですか?
岡田氏: 社内では、消毒液の設置、検温の実施、換気の励行などを徹底しています。これらの対応が当たり前になってきた今だからこそ、気を緩めずにやっていけたら、と思っています。
販売会も、基本の対策はマストとし、密回避のために完全予約制を導入しました。やはり、家具は直接見てから買いたいと思う方が多いので、安心してご来場いただけるように、いろいろと工夫しています。
また、ウェブサイトの運営業務を担当する事業部を筆頭に、リモートワークも推進しました。阿部とシステムに詳しい社員の2名で、多数のクラウドを試し、社外でもデータの共有がしやすいものを選定してくれました。
阿部氏: 扱うデータの容量によってクラウドを使い分けるなどして、スムーズにリモートワークができるように環境を整えました。
Q.日常業務でBCPを策定した効果はありますか?
岡田氏: BCPという”基準”を打ち出せたことで、緊急時でも、大人数をまとめやすくなったように感じています。対応の基準や規範がないままイレギュラーな状況に陥ると慌ててしまいますが、BCPを策定した今は、落ち着いて対応できる空気感がありますね。
Q.公社の支援に対するご感想は?
阿部氏: 策定の背中を押してくださったり、策定までいろいろとお知恵を貸してくださったり、本当に助かりました。策定後も、必要な備品の購入、設備の導入を支援する助成金があると聞き、中小企業にはとても有り難いと感じました。作った後もサポートがあると、安心して取り組みやすいですよね。
Q.BCPを今後御社の企業経営にどう生かしたいですか?
岡田氏: 今回、感染症のBCPを策定してみて、有事に備える仕組みづくりの基礎を知れたと思います。これをベースに、他のリスクが起きたときでも事業を継続できる準備をしていきたいです。
もちろん、新型コロナウイルスへの対応も、状況の変化に合わせて柔軟に変えていく予定です。とくに、販売会などの直接お客様と対峙する場では、ルールが厳しすぎるとお客様に窮屈な思いをさせてしまいます。リスク回避と事業継続が両立するバランスで、舵取りをしていきたいです。